過剰な何か

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エリック・クラプトン「River of Tears」超意訳 - 藤尾
2024/07/21 (Sun) 11:14:11
Eric Clapton - River of Tears 超意訳


日常のドブ川が私を押し流してゆく
殺伐とした日々を重ねて、君は遠くなるばかりだ
誰でもない自分に戻るために、一人の部屋に戻っても、苦しいままだ
行きつけのバーで君と口論して逃げ出したのは、昨夜のように感じる

こんな気分でずっと生き続けなければならないのか?
明日には違った気分でいられるだろうか、或いは永遠にこのままなのか?
この苦しさは、君がいなくなってからずっとだ
川で溺れているように苦しい
涙の川で溺れている
毎日が、涙の川に押し流され続けるように繰り返す
息ができないように胸が苦しい

とてもこの街にはいられない
全てを捨てて、君の思い出も捨てて出てゆくんだ
もう一度抱きしめたい
でもできないのは分かっている
だから逃げ出すんだ
前と同じだ。私は同じことを繰り返してしまった
君がじゃない、私が悪いのがわかっているのに、また過ちを繰り返してしまった

いつかここに戻りたい
また君と会う事を願ってしまう
そして君が、溺れている私を救ってくれると夢想してしまう
息が詰まるように苦しい
胸が押しつぶされるように辛い
涙の川で溺れて、流されてゆく
いつまで続くんだ?

涙の川で溺れている


     ※

作家と作品は別だ。作品を楽しめばよい…。
とはいうものの、作家の人生そのものの反映が作品だったりもする。
作品が素晴らしいからといって、作者が高潔な人物であるとは限らない。
作者自身が持つ偏りや歪みが吐露され、それが反映された作品が、観る者・聴く者・読む者たちの胸に深く沁み入ることもあるだろう。
クラプトンの抒情的な曲は、背景にある彼自身の出来事を知っていなくても、聴く者の胸を打つ。引きずるようにむせび泣く、或いは何かを奪おうとするかのように激しく叫ぶギターが、誰しもが胸に秘めている悔恨や甘い時や伝説と共鳴する。


この曲は、クラプトンの「孤独や苦悩、そして救いがテーマになった自伝的な作品」といわれる。
いったい、どこが「救い」なのか?
恐らく…、言語化し、曲にした事によって、自分自身を受容することができた…という事なのだろう。
過ちを繰り返してしまう自分を嘆き、苦しむ姿を歌いながら、自分自身の心の中にその居場所を準備し、安住の地を整え、否定・拒否・嘆きから転ずる事ができた…。
この曲を作ることによって、「涙の川で溺れている」自分自身をサルベージして救ったのだろう。
それは墓碑銘でもあり、伝説でもあり、ほかならぬ自分自身の姿そのものなのだ。それを胸に納めたとき、安心感や平安が胸に訪れたのだろう。

     ※

人生を禍根なく過ごすのは難しい。

アーティストたちが酒やドラッグに溺れ、離婚を繰り返し、メンバーやマネージャーと仲たがいし、自己模倣に苦しみ、それでも演じたりステージに立ったり、作品を描き続ける。そりゃあ、うつ病に陥ったり早世したり隠棲してしまうのも無理もないだろう。
アーティストの自伝本や自伝的映画を観るのは、けっこうツラかったりする。映画「クイーン」以上に、エルトン・ジョンの「ロケットマン」は(最後はうまくまとめていたが)けっこうシンドいものがあった。

そんな点からすると、サラリーマンは、ある意味救いがある。朝起きて、行くべき場所がある。これだけでも大きい。責任を背負い、役職によって持たされた権限を行使して課題や目標をみつけ、こなしてゆく。企業を回して存続させるために資金繰りに悩むのは胃が痛いが達成感がある。従業員に率先して身体を使って動き、三遊間ゴロをさばく。
(もちろん、それらが真逆に作用して、重圧や責め苦となってのしかかり、激しいストレスの原因になりもするけれど、今はおく)

そんな意味で、僕は「表現者」とかでなく、ただのサラリーマンで社会人生活を過ごすことができたのは幸いだったかもしれない。

https://www.youtube.com/watch?v=Qkti92d3eAM
Re: エリック・クラプトン「River of Tears」超意訳 - 藤尾
2024/07/22 (Mon) 11:56:25
Take2

思わず口論になってしまった夜の事が頭から離れない
気づくと、街角を歩く君の姿を探してしまう
流れに任せるままに、日々が過ぎてゆく
会いたいのは君だけだ、君がいなければ僕は誰でもない

こんな気持ちでずっと過ごさなければならないのか?
来週も、或いは何年も?
君がいなくなってからずっとこの調子だ
まるで川で溺れているようだ
涙の川で
溺れるようにして流されてゆくだけだ

もうとてもここにはいられない
全てを忘れて出てゆくんだ
ゼロから始めるしかない
いつまでも君を追い求めてもどうにもならない
また逃げ出すんだ

どうにかして元に戻ることを考えてしまう
君が僕を救ってくれる事をばかりを願ってしまう
涙の川で溺れている僕を
この苦しみはいつまで続くんだ?
悔恨に溺れるようにして流されてゆく
後悔に押しつぶされたまま時の流れに流されてゆく
泣きたい気持ちばかりが溢れてとまらない

涙の川で溺れている