( 承 前 )
大魔術師である老賢者と若い修行者がドラゴンと対峙している。
血気盛んで才能もある若者は全て自分で片付けるつもりだ。老賢者がそれを制した。
「ここはワシがやるべき場面だ」
ドラゴンと老賢者は激しく戦い、老賢者はドラゴンを倒したが魔力を使い果たして倒れた。老賢者は魔力を失い、ただの老人になった。
青年は激しく狼狽し後悔したが老人は言った。
「これでいい。我々が持っているものは、すべて天から授かったものだ。時が来たのだ。喜んで返そう。」
※
我々が持っている天から授かったもの…。ここでは魔力(≒支配する力)ですが、当然それにとどまらず、能力、性格傾向、容姿、財産…なども含みます。
若い修行者は、自分の才能や能力、強い意志力などを誇っていますが、全て自分が努力して手に入れた物だと思っています。それが彼を傲慢にしている。
老賢者も若い頃はそうでしたが、不断の修行や長く世間を生きるうちに、全て授かったものであったり、単に運が良かっただけだったと分かるようになりました。
(それが分かるようになると、教養の方向や意識の持ち方が変わり、ひいては世界の見え方、社会との接し方、他者をどう見てどう接するか…自分はどう生きるべきかまでもが変わってきます。若者は学ぶべきこと、気づくべきことがまだまだ多そうです)
★ただし、物語の中でここまで言ってしまうと、神話の域を外れ、途端に分別臭い修養ものや啓発本に堕してしまいます。重要な分岐点でしょう。