あの頃、洋楽は豊穣だった…。
まことに豊穣だった。
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僕は組織内において長く管理側の立場に立って極めてマジメに生きてきたその心理的な補償作用としてか、アウトローが、あっけなく死んでゆく曲が深く静かに好きだった。ダメな逸脱者がヤラれるのが小気味よいのでは「なく」、自分の中に抑圧されて眠っている悪への憧れが疼いて、アウトローやチンピラ、逸脱者が自らを解放して生き、その結果あっけらかんと死んでゆく生きざまみたいなものが胸に沁みてしかたがないのだった。
・ブルーオイスターカルトの「Then came the last day of may」は、若者たちがクスリの取引で泡銭を稼いで逃げる途中で仲間にあっさり撃ち殺されるという曲。虚無と暴力の無意味さ、冷徹な現実だ。
https://www.youtube.com/watch?v=eJ-UhD3lxq8
・キングクリムゾンの「Fallen angel」は、弟がギャングの抗争で若くしてあっけなく死ぬ話。理想や純粋性を奪われた者、社会から切り捨てられた者が「堕天使」として描かれている。救済の無さ…何という無慈悲。
https://www.youtube.com/watch?v=eLlmbCkb3As&list=RDeLlmbCkb3As&start_radio=1
僕は、これらは「自分の表に現れていない」自身の半面・裏面として感じずにいられなかった。僕の選択されなかった人生の半面、生きられなかったもう一方の自分として。
現代的に言えば、非常な自由社会における「選択なき自由」に翻弄された自己責任という悪夢。といったところだろう。が、そんなこと以前に、自分自身に引き付けるようにして聴かざるを得ない、惹かれる歌詞・曲だった。
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・他方で、キングクリムゾンの「The night watch」の荘厳さや格調の高さはどうだ!
レンブラントの同名の絵画を題材に、堂々と歌い上げる。どうよ!この文化の香り!
自然と視線が深く高く遠くなり胸が熱くなる。どうだ!これが芸術だぜ!文句あっか!
https://www.youtube.com/watch?v=WwFYy_Th7BA&list=RDWwFYy_Th7BA&start_radio=1
・ピンクフロイドはその中期において孤独・疎外・不安を歌ったが「Us and them」は
静かな諦念を抱えながらも視線を上げて社会を糾弾せずにいられない胸の熱さがにじみ出た曲だ。おおおお…泣けるぜ。
https://www.youtube.com/watch?v=O7w765-TbjY
で、僕の心を代弁したかのような曲(笑)
https://www.youtube.com/watch?v=H9_jQ9HA1fc
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あの頃、洋楽は誠に豊穣だった。
リンダ・ロンシュタットは無条件に素敵だった。あざとささえも、愛おしかった。
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さてさて、本項はいささか長くなりすぎた。
ここらへんで一旦閉じたい。マリオ氏には様々なご教示と何本もの補助線をいただき、本項は思いのほか豊かに展開することができた。ありがとう。感謝申し上げる。
あー面白かった。この板を長年続けてきてよかった。